大会長挨拶

第19回日本神経理学療法学会学術大会
学術大会長 諸橋 勇
(公立大学法人 青森県立保健大学)

謹啓 時下、皆様におかれましては益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。また、平素は 格別のご高配を賜り厚くお礼申し上げます。
 さて2021年12月18日(土)、19日(日)の両日、第19回日本神経理学療法学会学術大会を、いわて県民情報交流センターを会場にWeb学会として開催することになりました。
 日本神経理学療法学会の学術大会は、神経理学療法研究部会の学術集会から始まり、学会学術大会 となり、過去18回開催され、近年では参加者2500名規模の学術大会になりました。過去の各学術大会とも時代の変化、医療技術の進歩、それに伴った神経理学療法に期待されている様々な課題を反映させたテーマを取り上げてまいりました。
 学問(科学)の普遍性について考えると必然として、五感や思考など人のすべての認知機 能をも疑ってかかることになり、検証可能か、反証可能かどうかが重要になります。一方で、リハビ リテーション医療で関わる人間、生活、障害学的側面においては個別性、感性など個人の五感から発する ファジーで、複雑系事象が対象となります。また、人の手で行う技術、手技では熟達すればするほどアート の世界に通ずることも疑う余地がありません。一見すると、リハビリテーションの中で行われる科学的手続きと、実施されているアプローチは対立関係のようにも捉えられます。し かし、多種多様な理論や方法論がこれからもたくさん出てくる中で、対立項として科学と アートを考えるより、その起きている現象や課題の根源にある本質を考えることが重要だと 考えます。この本質論を考えることこそ、我々の知識、行動を一致させるヒントがあると考 えます。我々の発展的、建設的思考で基礎研究から臨床実践へ、そして臨床実践から基礎研究 へと相互連携や橋渡しをしつつ、「何のためにやるのか」を熟慮し、適切な意思決定に基づいた理学療法を対象者のために効果的に適用させることが求められています。
 本学術大会のテーマに「知行合一」というキーワードを入れました。「知行合一」は陽明 学の命題の一つであり、吉田松陰が用いた言葉で、岩手の偉人である宮沢賢治も好んで用いた 言葉と言われています。これは「知ることと行うことは本来一つである」という事を意味し ており、「知っていて行わないことは、知らないことと同じである」という、特にも行動、実践を重視した考え方です。「知は行の始めなり、行は知の成るなり」という、知と行とが一対になる「知行合一」の姿勢を再確認し、社会の要請に耐えうる知、行の 確立に邁進していくことこそが、我々理学療法士にしかできない専門性につながります。本学術大会 の特別講演、教育講演、シンポジウム、演題発表を通して、神経理学療法が向かうべき理想 郷を考え、そこに向かうための我々の責任と覚悟を再確認したいと思います。大会ポスターに示した二本の線路は、一本が「知の線路」、そしてもう一本が「行の線路」で、この学術大会で知 と行の融合を確認し、理想郷に向かってまたそれぞれ二本の線路が、融合と進化を繰り返す、そんなきっかけになる学術大会にしたいと考えます。
 つきましては、本大会の開催にあたりその趣旨にご賛同いただき、多くの皆さんが参加し、活発な議論ができることを心待ちにしています。何卒、宜しくお願い致します。

謹白
2021年8月吉日